板金論壇

「己の信じた道を歩む」ことを知る

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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9年前の大河ドラマ「篤姫」を見る

10日余に及ぶ夏休みは好きな読書と、2008年にNHK大河ドラマで放映された「篤姫」(原作は宮尾登美子の「天璋院篤姫」)の全編を改めて見なおしました。

篤姫は、外様大名ながら雄藩として海外事情にも精通していた薩摩藩藩主、島津斉彬の養女となり、幼くして13代将軍、徳川家定に嫁しました。そして将軍家御台所として大奥に入り、1,000名を擁した大奥の高みに上り、江戸城開城から徳川幕府の終焉までを「徳川の人」として立会うという数奇な道を歩みました。

その篤姫を中心に、明治維新を成し遂げた小松帯刀、西郷隆盛、大久保利通、坂本龍馬、ジョン万次郎、勝海舟などの人物が織りなすドラマは、フィクションであってもリアルに、明治維新の背景にある歴史を改めて教えてくれました。

「篤姫」は私がこれまで見てきた大河ドラマや、明治維新を取り上げたさまざまなドラマの中でも特筆すべきものであり、テレビ放映後に購入したDVD全巻を折々に見直しては、そのたびに明治維新を生きた人々に思いをはせ、出演者の台詞にハッとさせられます。

篤姫が生きた時代と酷似する現代の不安

世界的なテロ発生や経済における保護主義の高まり、地政学的なリスク、デフレからの脱却など、100年に一度の大変革の時代といわれる世相の中、多くの日本人は将来への不安を心に抱いています。そんな時代状況が、篤姫が生きた幕末と酷似していると感じる人は少なくないと思います。

だからこそ「大奥」という既得権益集団のトップとして徳川幕府の終焉から幕引きまでに立ち会い、困難な状況を乗り切った篤姫の人間力や判断力、説得力、「己の信じた道を歩む」という生きざまは、私たち多くの日本人の共感を集めるのだと思います。現代に蔓延する閉塞感を切り拓くためにはどうしたらいいのか―私を含めた1人ひとりが、この答えを模索する中で、篤姫に惹かれているのだと思います。

また、篤姫を含む10代、20代の若い人々が時代にあらがいながら、明治維新という新しい時代を切り拓いていったエネルギーを感じることができたのだと思います。

それから、今回新たに気がついたのは、「今日から私は鬼になる」と語る大久保正助(利通)に対し、母のフクが「お前が鬼なら私は鬼の母になる」と語る場面です。たったこれだけの台詞の中にも母の強さを感じました。また、番組の中でたびたび姿を見せる桜島は、今なお活発な火山活動を繰り返しています。そのエネルギーが維新を成し遂げた人々にも伝播しているようにも思えました。

つづきは本誌2017年10月号でご購読下さい。

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