板金論壇

事業承継に様々なケース/製造業経営者の高齢化が進む

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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全国社長の平均年齢は61.19歳

東京商工リサーチの調査によると、2016年の全国社長の平均年齢は、前年より0.3歳上昇し61.19歳に達した。団塊世代の社長交代が進まず、高齢化が顕著になった。社長の年齢上昇にともない業績が悪化する傾向もみられる。ビジネスモデルのマンネリ化や後継者難などで事業承継が難しい企業が、自主的な休廃業・解散に至るケースも増え、2016年の休廃業・解散は過去最多の2万9,583件となった。

年齢分布は産業による格差が際立った。製造業では30代以下の社長比率が2.35%と全産業で最低だったのに対し、情報通信業などの新興分野では40代以下が27.88%を占めている。市場拡大が見込まれる産業は新規開業や事業承継が進み、結果として社長の年齢も若返る傾向があるようだ。

社長の年齢と業績との相関では、70代以上では減収率、最新期の赤字(当期純損失)率、前期の赤字率、連続赤字率が各年代でいずれもワーストだった。社長が過去の成功体験をいつまでも盲信して時代に即した経営の妨げとなったり、後継者不在の場合は、新規の投資意欲を削ぎ、付加価値や競争力が減退し、業績悪化につながったりしていることを示唆している。

社長の年齢分布は、60代の構成比が33.99%で最も高かった。70代以上は、2011年は19.38%だったが、2016年は24.12%と4.74ポイント上昇している。その一方で30代以下は、2015年に3.77%と4%を割り込み、2016年は3.46%にまで落ち込んだ。

産業別の平均年齢では、最高は不動産業の63.01歳。次いで、卸売り業の62.56歳、製造業と小売業が各62.24歳と続いた。最低は情報通信業の56.50歳だった。

少子高齢化で社長の平均年齢が上昇の一途をたどるのは避けられない。社長の高齢化が一概に悪いとは言えないが、新陳代謝を織り交ぜた開廃業支援や事業承継への取り組み強化は急務となっている。企業独自の取り組みには限界もあり、税制面や資金面でのトータルな支援体制の拡充がより必要になっている。

大きな障害は事業継承者難

政府は中小企業の事業承継をスムーズにするための制度として、中小企業経営承継円滑化法を制定した。それにともない、税制においても事業承継関連税制ができた。

この制度は、具体的には中小企業の株式が世代間で承継される際に大きな税負担をともなうことがないように、相続税や贈与税の納税猶予を図って、中小企業の事業存続をバックアップしようというもの。本来は、中小企業等の後継者が相続等により、その会社の株式を被相続人から取得した場合、相続税を納税しなければならないが、一定要件を満たせば、その株式に係る相続税の80%が納税猶予される。また、相続だけでなく贈与の場合も、一定要件を満たせば、その株式に係る贈与税の80%が納税猶予される。

しかし、そうした制度やサポートがあっても現実に事業承継が円滑に進むとは限らない。一番大きな障壁は、事業継承者難の問題だ。

中小企業の多くは、家業として社長からその子どもへと承継されてきた。しかし現在は、少子化により社長の跡取り候補が不足している。さらに中小企業経営を取り巻く経済・社会環境の変化により、中小企業は売上減少の現実にさらされている。高学歴社会による価値観・職業選択の多様化により、事業継承者である跡取り候補に人生の選択肢が増えたこともある。

つづきは本誌2017年9月号でご購読下さい。

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