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女性活躍社会の到来に期待

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日本はこれから本格的な少子高齢化時代を迎え、労働人口は放っておけばどんどん少なくなっていく。このままでは日本の経済が衰退してしまう―そこで安倍政権は「1億総活躍社会」「女性活躍社会」の実現を掲げ、労働人口減少に歯止めをかけようとしている。その中核として、女性の力を「我が国最大の潜在力」として成長戦略の中核に位置づけている。

日本では、出産や育児が機となり働き盛りの30代で仕事を辞めてしまう女性が多い。この世代の女性たちが働いてくれるようになれば、日本の経済成長が後押しされると考え、「女性の活躍」が重要な戦略と位置づけられている。国は2020年までに、国会や地方議会の議員や企業の管理職など「指導的役割」に占める女性の割合を30%まで引き上げるという目標を掲げた。しかし、現在までの割合が十数%なので、実現は厳しい情勢となっている。

2015年8月には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)が成立。同法の基本原則には、「男女の職業生活と家庭生活が円滑かつ継続的な両立を可能とする」、「女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきであることに留意する」と明記されている。

つまり、「女性の活躍」とは男性も含めたワークライフバランスの見直し、女性本人の意思に基づいた働き方ができるような幅広い取り組みを求めている。ビジネスシーンで活躍したいという希望を持つすべての女性が、その個性と能力を十分に発揮できる社会を実現する。そのために、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表、女性の職業選択に資する情報の公表が、事業主(国や地方公共団体、民間企業など)に義務付けられた。これにより、中小製造業の中にも「女性活躍基本法における行動計画」の策定を行う事例が増えている。

先日取材した企業では、取り組み目標として、①計画期間内の定期採用において、大卒(修士等含む)女性の採用比率を15%以上とすること、②子どもの学校行事を優先したシフトづくり、放課後や長期休みの際に子連れ出勤を可能にすること、③退職者の再雇用、④アルバイト・パートを含む社員のメンタルヘルスの実施―などの行動計画を実行している。また、インターンシップでは女性を積極的に受け入れ、社内の雰囲気や実際に働くイメージを持ってもらうなど、採用につなげる努力もされていた。

今後は、仕事・勤務地・勤務時間・職種を契約で限定する「限定社員」を女性中心に積極的に雇用していくことも表明していた。「これまでの例では、男性社員のリーダーよりも、女性のパートリーダーのほうが現場では的確に実態を把握している場合が多い」と、その経営者は語っていた。

1986年に「男女雇用機会均等法」が施行され、女性が男性と同じ条件で働ける環境が整ってきた。その後、育児介護休業法や次世代育成支援対策推進法も施行され、家庭と仕事の両立支援も行われるようになった。それでも出産を機に辞めてしまうのは、仕事優先の考え方が残っている日本の現実があるからで、こうした現実が少しでも変わっていくことを期待したい。行動計画を公表した企業でも、「子育て支援」という観点から「限定社員」で女性を雇用するという計画はこれからの課題だという。

多くの女性社員を抱える企業経営者は「社員のライフスタイルと企業活動との共栄をどう考えるかが大切」と話していた。こうした経営者が少しずつ増えていることは喜ばしい。女性活躍社会の到来に期待します。

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