視点

ブランドマネジメントが必要

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刻々変化する経営環境に対応して、“変化対応力”を身につけることの重要性を何度も述べてきたが、最近お目にかかる板金企業の経営戦略を知るにつけ、驚かされることが増えている。将来の成長株を嗅ぎ取り、素早く判断し実行につなげる、能動的な姿勢が成功につながっているように感じ取れる。

前号の視点でも述べたように、最近の板金企業は自社の加工設備や技術をブランド化する傾向が強くなっている。ところが「ブランドをどのようにマネジメントするか、というところまで深慮している経営者は少ない」と、ある経営者は話しておられた。

開発した自社ブランド商品を、ネットや流通に乗せて販売しようと試みても「販売チャネルを持たない」「商流がわからない」などの理由で頓挫するケースは多い。また、販売代理店を苦労して探し当てても、相手側は「売ってやる」という姿勢のため、製造者側で売る努力をしなければ販売実績は上がらない。

例えば、独自技術で商品化に成功し、やっと拡販の機会を得ても、仕入先のバイヤーは何も助けてはくれない。以前のような目利きのバイヤーはいなくなっており、場所や機会は提供するものの「あとは各自の責任でやってください」というスタンス。そのため、売場の装飾、商品紹介用のパンフレット、商品陳列など、ヒトを惹きつける見せ方、売り方が必要になっており、訴求ノウハウまで考えたブランドマネジメントを徹底しなければ、実を得ることは難しいという。

この経営者が考案したのは、SWOT分析で自社商品の「強み」「弱み」「機会(チャンス)」「脅威」を徹底的に分析したうえで、これまでに成果を挙げている企業に自社の強みをプレゼンすること。そして、それぞれのブランドの強みをWin-Win連携するマルチミックスで、従来にない新しい価値を創造して新たなブランドに育てていくという手立てだ。

すでに、こうしたプロモーションによって何件もの企業・商品とコラボして新商品が開発され、一部の商品は海外にまで販路を広げるようになっている。

「我々のような中小企業の経営者は、インバウンド効果を活用すべきです。2016年の訪日外国人数は2,400万人を超え、政府は2020年までに4,000万人突破を目指しています。お土産として、またはリピーターとなって、帰国してから現地でも引き続き購入していただけるような商品開発を進めています」と、その経営者は語る。

経済産業省は2015年から日本独自の文化、技術、商品を海外へPRするクールジャパン政策に取り組み、伝統的な日本の文化・技能によって開発された商品の中から『The Wonder 500™』を選定している。こうした官民のイベントに積極的に参加、自社ブランドのブラッシュアップを図ることも考えなければならない。

さらに、ある経営者はご自身の経営マインドに「経営のカリスマ」というブランドを持たせようと、積極的にメディアに登場するとともに、講演会・イベントへの露出を増やし、ご自身をPRされている。「カリスマ経営者」までには少し距離があるが、メディアなどへの出演が話題を集めることもある。こうした活動もブランドマネジメントだ。最近はNHKなどの番組で板金企業が紹介される機会も増えている。

そういう目線で眺めていくと、チャンスはある。設備・技術・経営者・従業員・製品・社風など、ブランド化できる粒はたくさんある。これからの経営者は自分の会社でブランド化できる粒がいくつあるのか、粒の棚卸しを行うことが必要だ。そうして発掘したブランドをマネジメントし、新たな価値創造を行うことが必要になっている。

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