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景気上昇が見込まれる2017年

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師走から年明けにかけて、半導体製造装置を手がける板金企業の生産が好調に推移している。これは高機能スマートフォン向けプロセッサーやメモリーの需要が拡大、半導体製造装置の受注が大幅に伸びていることが要因となっている。

製造装置の主力メーカーである東京エレクトロンは、売上高増加にともなう利益率の改善により、2017年3月期の連結業績予想を上方修正した。また、SCREENホールディングスも2017年3月期の連結業績予想を引き上げた。いずれもスマートフォン部品の増産を受け、主力の半導体製造装置が好調なためだ。こうした傾向は、中国向けを中心に2017年も継続すると予測されており、製造装置向け板金製品を生産する板金工場では、2017年も増産対応に追われる雲行きである。

日銀が2017年12月、1年7カ月ぶりに景気の総合判断を上方修正したのに続き、内閣府も12月の「月例経済報告」で、1年9カ月ぶりに景気認識の基調判断を上方修正した。こうした判断の最大の根拠は、米国経済が好調なこと。1月20日に第45代米国大統領に就任したトランプ次期大統領による政策への期待感から、米国の長期金利が上昇。FRB(連邦準備制度理事会)は12月、1年ぶりに利上げに踏み切った。金融市場では、2017年も利上げは3回程度は行われるだろうと予測されている。

トランプ次期大統領は「America First」をスローガンに強い米国を取り戻すために、①中間所得層へ大型減税、②10年間で1兆ドル規模のインフラ投資、③保護主義的な通商政策、④金融規制の緩和―など、年4%の経済成長を目指す景気刺激策の実現を目指している。こうした政策は、1981年に就任したレーガン大統領の大規模な所得税減税を含む「レーガノミクス」を想起させる。

米国経済の回復基調と利上げにより、為替市場ではドルに対して110~115円レベルまで円安が進み、それを歓迎して日経平均株価も2年ぶりに2万円台をつける気配となっている。2012年12月に誕生した第2次安倍政権では、デフレからの脱却と富の拡大を目指して、アベノミクス「3本の矢」(①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略)を打ち出した。日銀は異次元緩和と呼ばれる大規模な金融緩和を実施する第1の矢を放った。これによって為替市場を円安ドル高に誘導、輸出企業を中心に業績が改善、日経平均株価は2万円を超えた。

しかし、2014年に消費税率を5%から8%に引き上げたことで個人消費が落ち込んだ。さらには世界経済を牽引してきた中国経済が2013年以降は減速したこともあって世界経済が停滞、景気は低迷。アベノミクスが目指した物価上昇率2%目標達成時期の見通しは「2017年度中」から「2018年度ごろ」と先送りされた。

「トランプショック」を起因とするところが大きい、2017年の景気転換は板金業界にとっては福音となる。むろんトランプショックは矛(ほこ)と盾の関係で、「America First」による保護主義や排他主義が強まれば、景気下押し要因となるリスクがある。しかし、財政政策による景気押し上げ効果のほうが上回ると判断すると、2017年の景気回復ペースは徐々に高まっていくとみられる。

しかし、日本は中・長期的に見れば人口減少傾向に加え、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」が浮上し、社会保障費の抑制が課題になっていく。その意味では景気順風が見こまれる2017年に5年、10年のロードマップを策定することが企業に求められている。

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