板金論壇

JIMTOF 2016は「2045年問題」を考える機会/人工知能の進歩は人類にどんな福音をもたらすのか

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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「Get Connected」がテーマ

昨年11月17日から22日まで東京ビッグサイトで開催された「JIMTOF 2016」(第28回日本国際工作機械見本市)では、IoTを活用した「Get Connected」というテーマとともに、設備機械や工場をネットワークでつなぎ、モノづくりプロセスの“見える化”(可視化)を図ることで、エンジニアリングチェーンやバリューチェーンを構築する「Industrie 4.0」(第4次産業革命)に対応したシステムが各出展者から提案された。

なかには工作機械の出展は2台、それも最新の機械は1台のみで、ブース全体でこれからの機械、工場、そして企業経営がどのように変化に対応していくのかという、近未来のモノづくりプロセスを提示した企業もあった。「Smart Machine」から「Smart Factory」へ、そして「Smart Company」を実現するプロセスを説明する企業もあった。

共通するコンセプトとしては、加工プロセスで起きる様々なイベントをビッグデータとしてクラウドサーバーにアップするとともに、ビッグデータを解析するAI(人工知能)の能力を高め、予知機能を高めることで設備の稼働率を上げ、生産性・品質(トレーサビリティー)を向上、機械やロボットに任せられる仕事は任せ、作業者はもっとクリエイティブな作業に従事できるようになる、という製造現場のパラダイムシフトだ。

2045年問題で議論も沸騰

技術的にはそうしたパラダイムが実現できるのは理解できるが、それが実際のモノづくりの現場にどのような効果をもたらすのか、最終ゴールがまだ十分に見えない印象を受けた方は多かったと思う。

会期中、以前から交流がある大学教授や研究者たちと久しぶりに会い、“飲みニケーション”した折にも、IoTの進化、特にAI化が製造現場に何をもたらすのかについて、老いも若きも参戦して議論が沸騰した。

その議論の中で特に皆の意識が高かったのが、「2045年問題」である。これはAIが自らを規定しているプログラムを自身で改良するようになると、永続的に指数関数的な進化を遂げる。その結果、ある時点で人間の知能を超えて、それ以降の発明などは、すべて人間ではなく人工知能が担うようになり、その後の進歩を予測できなくなるという問題だ。これは、米マイクロソフトの会長ビル・ゲイツが「私が知る限り、人工知能の未来を予言しうる最高の人物」と評している米国の発明家・未来学者で人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイルが発議した問題だ。

カーツワイルは、インテル創業者のひとりであるゴードン・ムーアが1965年に自らの論文上で唱えた「半導体の集積率は18カ月で2倍になる」という半導体業界の経験則―「ムーアの法則」を拡張し、進化の法則はコンピューターチップだけでなく、宇宙のあらゆる現象に適用できると考え、人工知能の性能が全人類の知性の総和を越える「技術的特異点(シンギュラリティ)」(Technological Singularity)と呼ばれるものが、2045年に来ると予測している。以来、「シンギュラリティ」は「2045年問題」とも呼ばれるようになった。

つづきは本誌2017年1月号でご購読下さい。

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