板金論壇

景気の好循環サイクルは実現できるか

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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勤労者世帯可処分所得は55.2万円減少

日本食品機械工業会時局講演会(主催:一般社団法人日本食品機械工業会)で講演された一般財団法人日本総合研究所会長、寺島実郎氏の話の概要をお聞きした。正直、その内容には大変驚いた。寺島実郎氏は著名な経済評論家。早稲田大学の政経学部を卒業後、三井物産へ入社、海外勤務を経て三井物産戦略研究所の社長、会長を歴任。2010年からは一般社団法人日本総合研究所理事長に就任されており、エネルギー問題をはじめとして、さまざまな論文を発表されている。

氏は冒頭から日本経済の現状を厳しく指摘されたという。その根拠として、普通のサラリーマン家庭が毎月実際に使える所得である「勤労者世帯可処分所得」が、2000年には月額47.3万円であった。これが2015年には42.7万円となり、21世紀に入ってからの15年間で月額4.6万円、年額では55.2万円も減少していると指摘された。注目すべきは、アベノミクスが始まる前の2012年の42.5万円と現在はほぼ同じであり、異次元の金融緩和も国民を豊かにしていないことは確かだと述べられたようだ。

世帯あたりの消費支出は月額3万円も減少

家計消費構造の変化を、全国全世帯(単身者を除く2人以上の世帯)の消費支出の変化でみると、21世紀に入ってからの15年間で、世帯あたりの消費支出は月額3万円減少した。

消費が月額3万円も減る中、増えた項目と減った項目が存在する。増えた項目は通信費、自動車関連費、そして健康・医療関係。通信費の増加は、電話代の単価は下がっても一家全員が携帯電話とスマートフォンに依存する生活に移行したことが大きい。また、健康・医療関係費の増加は、いかに丈夫な人でも自分の健康に関わることには出費を厭わないという傾向が見てとれる。

一方、減少が顕著な費目は各自の小遣いや交際費で、交通費や外食なども含め、日本人が悲しいほど行動的ではなくなったことがうかがえるという。特に仕送り金が減少し、地方から出てきた学生がアルバイトに疲弊している姿も報道されている。さらに、授業料・教養娯楽・書籍代なども減少し、日本人は学びへの余裕を失いつつあるとも言われていたという。

また、アベノミクスによる異次元の金融緩和によって株価が上昇した。2012年に9,108円だった日経平均株価が、現在は1万7,000円台とほぼ2倍になっている。しかし、冷静に見れば、2000年の日経平均株価は1万7,161円で現在とほぼ同等。バブルのピークだった1989年末は3万9,000円台だったわけで、ようやくその半分に戻った程度ともいえる―とも述べられたという。

つづきは本誌2016年12月号でご購読下さい。

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