Independents ― 事業継承者の起業家精神

コーディネーター機能を備えた板金企業

企業間連携でワンストップ対応と商社的機能を強化

有限会社 穴沢製作所 専務取締役 穴沢 一 氏

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レスキュー隊志望から事業継承を決意

画像:コーディネーター機能を備えた板金企業穴沢一氏

「高校2年生のとき、就職コースへ進んで子どもの頃からの夢だった消防レスキュー隊を目指すか、進学コースへ進んで家業を継ぐかで、選択を迫られました。それまでは事業継承について、はっきりと意識したことはありませんでした」と穴沢一専務は振り返る。

1980年生まれの穴沢専務は現在36歳。小学校高学年の頃から家業の工場に出入りして、バリ取りやタップ、脱脂といった作業を手伝った。学生時代も、夏休みと冬休みには、いつも工場でアルバイトをしてきた。

高校ではラグビー部に所属し、厳しい練習に明け暮れた。消防レスキュー隊は、小学校高学年の頃からの憧れだった。高校ではラグビー部の先輩が消防に就職していたこともあり、希望さえすれば消防士になることはできそうだった。父親である穴沢進社長は「自分の人生なのだから、自分がやりたいことをやれ」と言ってくれていた。

「しかし腰を据えて本気で進路を考えたとき、小学生の頃から工場で手伝いをしながら感じた、モノづくりのおもしろさや達成感が思い返されました。父が苦労して築き上げた会社をなくしたくないという思いも湧き上がってきて、悩みに悩んだ末に事業継承を決心しました」。

「継ぐなら大学へ進学すること」が、穴沢社長が出した条件だった。穴沢専務は進学コースに切り替え、高校3年生になってからは部活動と予備校を両立しながら大学受験の準備を進めた。進学先は、「将来ここに戻ってくることが決まっているのだから、大学は遠くへ行こう」と北海道・函館の大学に決めた。事業継承が前提の進学だったため、大学は商学部の企業経営コースを選択した。

大学へ進学してからも、「これで本当に良かったのかな」という心の揺らぎはあった。しかし大学3年生の1999年、社長から「本当に継ぐんだろうな。継ぐならレーザを入れるが」と念押しがあり、「もう後には引けない」と腹をくくった。

  • 画像:コーディネーター機能を備えた板金企業埼玉工場のパンチングマシンEMZ-3510NTP+ASR-48M
  • 画像:コーディネーター機能を備えた板金企業追従装置付きのベンディングマシンをはじめとする曲げ工程(埼玉工場)

精密板金の横浜と大型筐体の埼玉

㈲穴沢製作所は、穴沢進社長が1973年に東京都大田区で創業した。畳5畳分の工場で、両替機やアミューズメントマシンの貨幣鑑別処理を行う機構部品などを加工する仕事からスタートした。

1987年にはコインロッカーなどの大型製品の溶接組立に対応するため、埼玉工場を開設。1988年には宅地開発の影響で、大田区の本社工場を横浜市の現在地に移した。

メインのコインロッカーの仕事は95%がリピート品でロットサイズは10~100個、成形加工やバーリング・タップも多い。そのため埼玉工場では棚付き・PDC(自動金型交換装置)付きのEMZ-3510NTP+ASR-48Mが昼夜を問わず自動運転でブランク加工を行っている。埼玉工場の4人のスタッフは、工程ごとの担当者を定めず、生産スケジュールに従って今日は曲げ、明日は溶接組立というように、常に全員がチームで動いている。

横浜の本社工場では肩幅サイズ以下の精密板金加工が主体。コインロッカー向けの部品でも異形穴やR形状を含む場合は、横浜のレーザマシンで加工して埼玉工場へ持っていく。

現在の得意先社数は約50社。売上構成をみると、コインロッカーやセキュリティーボックス関連が30%超、駐車場の精算機関連が10%超。その他の工業用ミシンの制御装置、アミューズメントマシン、半導体製造装置関連などがそれぞれ7~8%となっている。

「2020年の東京五輪へ向けて、コインロッカーはSuicaなどのIC乗車券に対応した機種の導入が進み、駐車場の精算機関連も好調です。最近では、ホテルのベッドサイドに設置される照明やラジオなどのコントロールパネルの仕事も、宿泊施設の新設やリフォームで伸びてきています」。

  • 画像:コーディネーター機能を備えた板金企業横浜工場で製作した精密板金加工製品(処理前)
  • 横浜工場で製作した精密板金加工製品(処理前)塗装前のコインロッカー筐体

会社情報

会社名
有限会社 穴沢製作所
代表取締役
穴沢 進
専務取締役
穴沢 一
本社・横浜工場
神奈川県横浜市港北区新羽町2088-2
埼玉工場
埼玉県大里郡寄居町大字赤浜字赤木2591-1
電話
045-544-5981(本社)
設立
1977年
従業員数
16名
事業内容
精密板金加工、プレス加工、機械加工、処理加工
URL
http://www.anazawa.co.jp/

つづきは本誌2016年11月号でご購読下さい。

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