視点

メガコンペティション本番

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今年に入ってから8月は4個、9月に入ってからは早くも2個目の台風が上陸しました。

最近は、規模こそ小型ながら台風の雨雲が前線を刺激、集中豪雨をもたらし、土砂災害などの被害が目立っています。また、上陸コースにも変化が起きており、関東以北の東北、北海道に上陸する台風も増え、これらの地域に大きな被害をもたらしています。日本近海の海水温の上昇など、地球規模で発生する気候変動の影響が大きいといわれていて、地球温暖化対策が全方位で望まれています。

亜熱帯地域では積乱雲の発生で、午後になるとスコールと呼ばれる雷雨が突然襲いますが、最近は日本も亜熱帯化、スコールに似た猛烈な雨が集中的に降るようになっています。

ところで、日本が亜熱帯化する一方、モノづくりの世界では“Made in Local, Quality by Japan”という考えが浸透しつつあります。特に昨年12月に経済統合したASEAN地域において、製造業のモノづくり力の強化が目立っています。板金業界では、台湾の板金業界のトップ100社のレベルは日本と遜色がないと本欄で何度も紹介していますが、台湾と同様、タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インドネシアの板金業界のトップ企業のモノづくり力も、日本と遜色がないレベルになっています。特にこの地域には日系の板金企業も数多く進出。これまでは日本本社の分工場という意味合いが強かったのですが、最近は日本本社以上に稼ぐ優秀な工場に変貌しつつあります。その多くが日系企業以外に、この地域に進出している欧米企業の仕事を積極的に受注するようになっているからです。2005年にベトナムへ進出した企業は、現在では米国の大手電機メーカーの風力発電装置の板金製品を一手に受注。ベトナム工場で製造された板金製品が風力発電装置に組み込まれて世界中に輸出されています。最近は日本本社と連携して板金装置部品の受託加工を積極的に営業するようになっています。こうした変化は、これまで日本だけを向いて仕事をしていた日系企業が、積極的に海外からの仕事を受注するだけの力をつけてきたことで起こっています。

これまでは、この地域で活動するローカル企業が、自国の市場には仕事量が少ないため、積極的に海外の仕事、特にこうした地域に進出している外資系企業の仕事を受注することで、事業を拡大させているのを横目で見てきました。日本国内の仕事が減少する中で、日本本社に頼ることなく、自立という意味からも、ローカル企業と同様に欧米系企業などの仕事を開拓するようになっています。

メガコンペティション(大競争時代)ということは以前から言われています。ASEAN地域の受注競争の実態を見ていると、日系企業、ローカル企業、台湾系や中国系の企業など、様々な企業が激烈な受注競争を戦っている状況に、大変な厳しさを感じます。

そして今、こうした戦いを繰り広げている日系以外の企業が受注ターゲットにしてきているのが日本市場です。子息や子女を日本に語学留学させたり、日本の企業に研修生として送り込みコネクションを構築させたり、将来を見据えて手を打っている企業も散見されます。すでに日本国内に営業所を開設した海外の板金企業の数も増えてきています。また、毎月のように訪日して営業活動をする企業も増えていて、日本国内でもメガコンペティションの時代を迎えようとしています。長く、仕事を「待つ」工場だった日本の板金企業も、メガコンペティションの渦に巻き込まれる時代がやってきました。

日本から世界を見る一方向からだけではなく全方位から日本を見る視力を持つ必要が生じています。

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