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モノづくりは楽しい ― 第28回優秀板金製品技能フェア受賞製品

「学生作品の部」に12年連続で出品

100年以上にわたりクラフトマンシップを継承

東京都立工芸高等学校

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画像:「学生作品の部」に12年連続で出品第28回優秀板金製品技能フェア「学生作品の部」で銅賞を受賞した「バスケットシューズ」(個人制作)

100年の歴史をもつ工芸専門高校

画像:「学生作品の部」に12年連続で出品東京・水道橋駅前にある東京都立工芸高等学校

東京都立工芸高等学校は、普通教科に加え、工芸・デザイン分野の専門教科を学ぶことができる都立高校。1907年(明治40年)に現在の中央区築地で「東京府立工芸学校」として開校して以来、109年の歴史を誇り、長年にわたってモノづくりの担い手を輩出してきた。

関東大震災で被災してから現在地へ移転。JR総武線水道橋駅から徒歩1分という好立地で、東京ドームや後楽園遊園地に近い。戦後の都政変更により現在の「東京都立工芸高等学校」に改称した。卒業生の中には鍛金の田口壽恒氏、彫金の桂盛仁氏、木工芸の須田賢司氏といった重要無形文化財保持者(人間国宝)をはじめ、洋画家で文化勲章授章者の山本丘人氏、グラフィックデザイナーの原弘氏など、著名な工芸家、クリエイターが名を連ねる。

同校は現在、「アートクラフト科」「マシンクラフト科」「インテリア科」「グラフィックアーツ科」「デザイン科」という5つの専門学科をもつ。かつてはそれぞれ「金属科」「機械科」「木材科」「印刷科」「図案科」という学科名だったが、学科改変で名称を変更するとともに、教育内容も時代に即したものに変化していった。

このうち「マシンクラフト科」と「アートクラフト科」は、職業訓練法人アマダスクールが主催する優秀板金製品技能フェアの「学生作品の部」に毎回出品している。「マシンクラフト科」は、同フェアが学生作品の募集を開始した2004年度(第17回)から12年連続、「アートクラフト科」は2006年度(第19回)から10年連続で出品しており、両科あわせて金賞を2回、銀賞を4回、銅賞を5回、受賞している。

今回は、「マシンクラフト科」を訪ね、主任教諭の鈴木頼彦先生と進路指導部の小林康之先生に話を聞いた。

画像:「学生作品の部」に12年連続で出品左:CADを使って制作図を作成する/中央:作業着を着て旋盤の実習を受ける/右:ウォータージェットによる加工例を熱心に見入る

デザイン・図面・モノづくりが一体の教育

「アートクラフト科」は金属・ガラス・宝石を素材に、レリーフ、銅鍋、花器、食器、ジュエリー、有線七宝、トンボ玉、鍛鉄家具といった手工芸品の創作を行う専門学科。金属の場合は鍛金の技法を使って、1枚の板材からたたき板金で打ち出して作品をつくる。

「マシンクラフト科」は「マシンで創る自分のかたち」をキャッチフレーズに、主に金属を素材とする工芸品や工業製品のデザインから制作までを行っている。「デザイン」「制作図」「モノづくり」という3つの要素が一体となった教育を重視し、機械に関する授業や実習だけにとどまらず、美術や色彩感覚、デザインについても、技術と知識の両面から学習する。実技では、与えられたテーマに沿ってアイデアスケッチ、デザインを行い、機械加工・板金加工といった工法によって制作図を作成し、モノづくりを行っていく。

主任教諭の鈴木頼彦先生は「当校は種別でいうと工業高校に当たります。『マシンクラフト科』が『機械科』という名称だった頃には、一般的な工業高校と同じように、教師が生徒に図面を渡して、全員で同じものをつくっていたようです。しかしその後、学科名が『マシンクラフト科』に変わってからは、生徒の個性と創造性を育成していく内容に変化していきました。今では、マシンクラフト科に所属する36名の生徒のうち2/3が女子。デザインの基礎から学び、世界にひとつだけのオリジナル作品をつくれるという当科の特性が受け入れられています」と語っている。

卒業生の進路も一般的な工業高校とは異なり、就職が10%程度で、90%ちかくが大学か専門学校へ進学する。しかも東京芸術大学をはじめ、5美大と呼ばれる武蔵野美術大学、多摩美術大学、女子美術大学、東京造形大学、日本大学芸術学部などへ進学する生徒も一定数いる。

画像:「学生作品の部」に12年連続で出品左:2014年度(第27回)に金賞を受賞した「恐竜」(個人制作)/中央:2013年度(第26回)に銅賞を受賞した「安土城」(協同制作)/右:2010年度(第23回)に金賞を受賞した「風車」(協同制作)

学校概要

学校名
東京都立工芸高等学校
校長
鳥屋尾 史郎
住所
東京都文京区本郷1-3-9
電話
03-3814-8755
創立
1907年
URL
http://www.kogei-h.metro.tokyo.jp/

つづきは本誌2016年5月号でご購読下さい。

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