板金論壇

事業継承と板金業界の“New Wave”

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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知的資産の継承が“胆”

光陰矢のごとし ― 年を重ねるごとに時間の経過を早く感じる。そんな中で昨年から特に気になっているのが事業継承問題。この業界で長く取材活動を行っていると、取材を通じて知り合ってから、おつきあいする期間が20年以上 ― 中には30年を超える経営者の方々もおられる。知り合った当時は専務や取締役として父親である先代社長の片腕として活躍していた方々も、最高齢では76歳になって、なお社長として頑張っている方もおられる。

人生を四季に例えて若年期を「青春」、壮年期を「朱夏」、 熟年期を「白秋」、老年期を「玄冬」と表現することがあるが、「朱夏」から「白秋」に差し掛かった頃にお目にかかった方々が、50代から60代に入り、ぽつぽつ次世代への事業継承を考える「玄冬」の時代を迎えようとしている。

事業継承を考えると、一言では社長交代ということである。また、資産の継承ということで考えると、事業用資産(設備・不動産など)、資金(株式・運転資金など)の継承がある。しかし、意外に見過ごされている重要なことが、目には見えない経営資源の継承である。経営理念、熟練工の持つ匠の技、社長が備える信用、得意先担当者の人脈、営業秘密、顧客情報、特許・ノウハウ、許可・認可・認証などの「知的資産」の継承である。知的資産は、バランスシート上に記載されている資産以外の無形の資産であり、企業における競争力の源泉で、こうした知的資産の継承が大変重要だといわれている。

こうした目には見えない資産は、社長交代が終われば自然と次の代表に受け継がれていくものと考える後継者が多いようだが、そんなことはない。ヒト・モノ・カネの継承は事務的、法律的な手続きで完了するものの、知的資産に関しては1代限りの同じ人が蘇るわけではないので、感性・資質などの点で同じ心の持ちようが次世代に継承されにくい。事業継承のむずかしさは、この知的資産の継承が“胆”になる場合が多い

つづきは本誌2016年2月号でご購読下さい。

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