視点

2016年を「スマートファクトリーが花開く年」に

LINEで送る
Pocket

2015年が終わろうとしている。

昨年12月号の視点では「スマートファクトリー元年」と題して、IoT技術を活用したスマートファクトリーが大きな話題を集める1年になる」と紹介した。中でもドイ
ツが推進するIndustrie 4.0が世界のデファクトスタンダードを目指している、と書いた。

予想どおり、2015年はIndustrie 4.0の話題に明け暮れた。日本でも、安倍首相が発足式に出席した日本発のロボット革命を推進する「ロボット革命イニシアティブ協議会」や、経済産業省や日本機械学会の後押しで進める「IVI」(Industrial Valuechain Initiative)などが発足。遅まきながら、日本発の「スマートファクトリー」実現に乗り出した。

いずれの組織も現状は参加企業からヒアリングを行いながら、要件や構想づくりに着手したばかりのようだ。そうした中、Industrie 4.0の中核企業でMicrosoft、IBM、Oracleに次ぐ世界第4 位のソフトウエア企業で、ERP(基幹システム)市場のトップシェアを持つSAP(本社・ドイツ)の動きが活発だ。

SAP Japanは先ごろ有志の相互研鑽を目的に「IoT研究会」を発足した。工場のあらゆる設備や装置のログをリアルタイムに吸い上げ、設備や装置の稼働状況を可視化しながら、その情報を水平展開して販売、サービス、最終的には顧客までをつなげることで、市場が要求する商品をジャスト・イン・タイムに生産して顧客に提供する「スマートファクトリー」の構築を考えていこうとしている。いわばモノづくりの現場から上がってくる垂直情報を水平展開することで、プロセス改革を実現させていこうとしている。

こうした考え方はSAPのみならず、IoTのベースであるICTをビジネスにしているIT企業や生産財メーカーであれば当たり前の考えになるのだが、いかんせんプラットフォームであるERPでトップシェアを持つSAPの強みを考えると、他社はいかにSAPが提供する基幹システムに情報を上げるのか、さらにERPから出てくる生産計画をはじめとした生産情報・品質情報を水平展開する際に、いかにして自社のデバイスをつなげていくかを考えるようになっている。Industrie 4.0はSAPというERPのガリバー企業があったからこそ実現できたといっても過言ではないだろう。

逆に言えば、日本企業とすればSAPとのアライアンスを強化して、工場内の垂直情報、企業・顧客と連携する水平情報に、どこまで日本化させたプロセスを構築できるかが課題となっている。その中で、日本にはもともと現場主義―ボトムアップで生産改革を成し遂げてきた伝統がある。日本のモノづくりのDNAともいうべき「3現主義」を徹底して進める中で、日本発のスマートファクトリーを進めていく必要がある。

さいわい、IVIの理事長である法政大学デザイン工学部の西岡靖之教授はもともと、日本のモノづくりの強さは中小製造業があってのこと、として、ボトムアップ型のプロセス改革を推進されてきた研究者である。現場に根ざした研究者が推進するプロジェクトだけに、IVIの活動には注目している。

来年11月には東京ビッグサイトで、「第28回日本国際工作機械見本市」(JIMTOF 2016)が開催される。今回は東京五輪開催に対応して、ビッグサイトに新たな展示会場がオ-プンする。JIMTOFはそのこけら落しを兼ねている。それだけに日本の工作機械メーカーがスマートファクトリーを前面に押し出した出展を行うことは間違いない。

2016年は花開くスマートファクトリーに期待したい。それとともに、2016年が平和で平穏な1年であることを願っている。

LINEで送る
Pocket

関連記事

視点記事一覧はこちらから