Interview

「つながる町工場」への挑戦

個別受注生産を得意とするアーバン工場/非定型情報まで含めた企業間情報連携を目指す

株式会社 今野製作所 代表取締役 今野 浩好 さん

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画像:「つながる町工場」への挑戦「つながる町工場」の基本構想

東京都足立区に本社を置く㈱今野製作所。板金事業部は工場スタッフ7名、年商1億2,000万円という規模ながら、今野浩好社長が中心となって、情報連携の観点から様々な取り組みを行っている。2011年からはNPO法人ものづくりAPS推進機構(APSOM)の「東京都交流促進事業」に参加し、法政大学デザイン工学部・西岡靖之教授の指導のもと、“ITカイゼン”に取り組みはじめた。2013年度には、ITコーディネータ協会(ITCA)が発足した「コーディネート連携TF」に参加し、自社だけでは対応できない顧客の要求に、異なる得意分野をもつ中小企業が連携して対応する“コーディネート連携”の調査研究を行った。その成果を踏まえ、2014年からは同社を含む中小製造業3社による企業間連携の実証実験「つながる町工場PJ」(2年計画)がスタート。今年6月に発足したコンソーシアム「Industrial ValuechainInitiative」(IVI)では、西岡教授が理事長、今野社長が理事を務め、ボトムアップ型アプローチによる「つながる工場」の実現を目指している。

― 法政大・西岡靖之教授が6月に㈳日本機械学会や経済産業省などの支援を受け、日本版Industrie4.0とも位置づけられるコンソーシアム、IVIを発足しました。御社はIVIの正会員として加盟し、今野社長は名だたる大手企業のキーマンと並んで理事に選任されています。また、2014年からは江戸川区の中小製造業2社と連携し、「つながる町工場PJ」の実証実験に取り組んでいます。こうした取り組みの経緯と、今野社長の問題意識について、うかがっていきたいと思います。まずは、御社の事業概要について教えてください。

画像:「つながる町工場」への挑戦今野浩好氏

今野浩好社長(以下、今野) 当社の売上の内訳は、油圧機器事業が80%、板金事業が20%。油圧機器事業は福島工場(福島県相馬郡)、板金事業は東京工場(東京都足立区)を生産拠点としています。板金事業に関していえば、実態はアナログな職人型の板金工場。東京都内でスペースも限られ、タレパンやレーザもなく、設備面では大きく遅れを取っています。そのかわり、長年の加工経験とノウハウを活かし、構想段階からの設計サポートにも対応する、ステンレス製品を主体とした単品受注生産を得意としています。首都圏には大学や研究機関、製薬メーカー、食品メーカーなどが集積していて、ステンレス製品―特に理化学機器へのニーズが高い。また、理化学機器の分野は、専門商社が加工業者に製作を委託するのが一般的で、明確な設計情報が残っていないことも珍しくありません。そこで当社は単品受注生産に特化し、リバースエンジニアリングや設計からの対応を行うことで、ニッチかつ高付加価値なモノづくりを目指してきました。

― ほとんどが新規・単品ということでしょうか。

今野 頻度は多くありませんが、リピートもあります。そのため、単に職人の名人芸でつくるのではなく、きちんと履歴を残しておく必要があります。職人によるアナログなモノづくりという特性を活かしながらも、リピート品では過去のデータを活用できるデジタルな仕組みも採り入れてきました。

― “ITカイゼン”にあたり、どのような課題がありましたか。

画像:「つながる町工場」への挑戦法政大・西岡靖之教授が考案したITツール「Contexer」を使って構築した独自の生産管理システム

今野 課題は山積していました。最大の課題は、管理作業の煩雑さです。顧客の取引口座数は175社。2008年にWebサイト「板金オーダー.com」を開設して以来、毎年20社くらいWebから新規の注文が入り、そのうち1/3くらいがリピーターになってくださいます。平均ロットサイズは10個程度ですが、中心ロット帯は単品~数個。顧客数が多く、ロットサイズが小さいために、個々のオーダーに対して、お客さまから要求を引き出し、最適な品質でモノづくりをしていこうとすると、管理工数が膨れ上がってしまいます。新規顧客や新規品の引合いが多いことで、見積り工程もボトルネックになります。また、腕利きの職人が引退を迎え、その下は20代の若手社員しかいない状況で、技術伝承も課題でした。

会社情報

会社名
株式会社 今野製作所
代表取締役
今野 浩好
住所
東京都足立区扇1-22-4(本社・東京工場)
電話
03-3890-3406
設立
1969年
従業員
34名
業種
①油圧機器事業(自社ブランド「イーグル」の油圧ジャッキ、油圧爪つきジャッキ、油圧機器の設計製作)/②板金加工事業(クリーン環境のステンレス器具・備品のオーダーメイドサービス、研究開発機器・装置のプロダクトパートナー)/③受託開発事業(福祉機器などの開発・製造販売)
URL
http://www.bankin-order.com/

つづきは本誌2015年10月号でご購読下さい。

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