板金論壇

緑陰で考察―日本人のモノづくりの誇りと将来

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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景気に変化の兆し

今年の夏休みこそ避暑地でゆっくり過ごそうと計画していましたが、旅先から帰宅早々、パソコンに向かっていつもどおりの過ごし方をしてしまいました。合間には溜め込んでいた本を読んだりしながら午睡というのも経験しました。

休み中には中国人民元が3日間連続して引き下げられ、世界経済を牽引する機関車役を担ってきた中国経済の減速が顕著となり、日本の4-6月期の実質GDPも年率で1.2%減となるなど、明らかに景気に変化の兆しが見えるようになりました。そうした状況を見るにつけ、改めて日本経済の先行きに下振れリスクが高まっていると感じました。その一方で、そうした思いとは別にGDPの60%を占める個人消費や15%を占める設備投資など、内需こそが日本経済発展の原動力であるという思いを新たにしました。

また、中国・天津で発生した爆発事故の原因を知るにつけ、自然災害は多いものの災害に強い日本に定住していることの安全・安心を強く感じました。天津の事故では倉庫内のコンテナに大量の化学物質が貯蔵されており、そこへ消防隊が消火のために放水した水が化学反応を起こして爆発が発生したといいます。むろんその前に、港湾近くの工業団地内の倉庫に3,000トンもの危険な化学物質が保管されていたことを消防隊はもとより、被災した住民や工業団地で働く港湾労働者たちも知らなかったということが問題です。危険な化学物質が大量に保管されていることが事前に分かっていれば、もうすこし別の対処方法もあったのではないでしょうか。中国社会の矛盾が露呈してしまった感を受けました。

その後の報道によると、中国には専門職としてのプロの消防隊員がおらず、大半が人民解放軍の消防隊員ということで、給与も安く、たいていは2~3年で退役して辞めてしまうということで、消火・防災の知識を備えたプロの消防隊員を育てるのは難しいようです。日本や欧米先進国では消防士は消火活動や救助活動に誇りを持つプロフェッショナルというイメージがありますが、中国ではまだまだその域には達していないようです。

つづきは本誌2015年10月号でご購読下さい。

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