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新しい時代に挑戦する勇気こそ、日本の発展の原動力

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安倍政権の経済政策に関して「評価」をする経営者は多い。製造業に限って考えれば、欧米と比べてビンテージ(設備の平均年齢)が高齢化している日本の製造業の活力を取り戻すために実施している「設備投資促進税制」や「ものづくり補助金」、「省エネ補助金」など、特に設備の高齢化が目立っている中小製造業の設備更新を促進させる手立てと、評価する声が大きい。また、「ロボット革命イニシアティブ協議会」を発足させて、日本が世界に誇るロボット技術を、成長戦略の要にしようと努力していることにも、一定の評価が得られている。

ところで、2001年4月に内閣総理大臣に就任し、在任期間が1,980日と、戦後の歴代内閣では3番目の長期政権を実現した小泉純一郎元首相は、国会で行った首相就任演説で次のように述べている。

「我が国は黒船の到来から近代国家へ、戦後の荒廃から復興へと、見事に危機をチャンスに変えました。これは、変化を恐れず、果敢に国づくりに取り組んだ国民の努力の賜物であります。私は、変化を受け入れ、新しい時代に挑戦する勇気こそ、日本の発展の原動力であると確信しています」―このくだりが好きで、いろいろなところで講演を依頼されると、この言葉を冒頭に引用して、聴講していただく方々に未来への「希望」と、一歩踏み出す「勇気」を持っていただきたい、とお話ししている。

安倍政権が推進している経済政策も、「税金のバラマキ」で終わってしまっては意味がない。その政策をトリガーにして、企業経営者が一歩前に踏み出す「勇気」を持つことが必要で、そのためには経営者に「希望」を持っていただかなければいけない。それが成長戦略へとつながる。

その成長戦略と合わせ、これから経営者が未来への「希望」につながるものとして考えなければならないのが、日本が災害に強い「安全な国」「強靭な国家」になることである。1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災と、日本はこの20年間で大きな震災を2度も体験した。そして原発事故をはじめ、戦後日本の高度成長を支えてきた社会インフラが、いかに脆弱であるかを痛感させられた。

1964年の東京五輪開催を機に竣工し、日本の経済発展を支えた東海道新幹線、首都高速道路は、いずれも開業後50年を経ている。コンクリートの劣化寿命を考えれば大規模修繕が必要なことは自明である。2012年12月には、中央自動車道の笹子トンネルでコンクリート製の天井板崩落により9名が下敷きになって亡くなるという痛ましい事故が起きた。笹子トンネルは開通から35年が経過しており、天井板の崩落は「経年劣化」、つまり老朽化が原因とみられている。その意味では日本の社会インフラの大規模修繕は、待ったなしで行う必要がある。

国土交通省は2060年までに所轄する鉄道、道路、港湾などの社会インフラの修繕費用として190兆円が必要との試算を発表。さらに総務省は、学校、病院などの公共施設を含む大規模修繕には同じく2060年までに、400兆円もの予算が必要との試算結果を発表している。この費用は日本の未来には欠かせないものであるのと同時に、これからの製造業にとっては新たな需要となる。それだけに、製造業の未来を創ることが、日本の未来を創ることになる、―このことを確信して、新しい時代に挑戦する勇気を持っていただきたい。その「勇気」こそが日本の発展の原動力となる、という意識を経営者の方々にもっていただきたいと思います。

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