板金論壇

ガラパゴス化した日本の製造業/日本の常識は世界では通用しない

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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1億人超の市場を活用して経済発展する日本

最近、海外のお客さまと話をすると「ガラパゴス化した日本」を意識せざるを得ない。日本のGDPの6割は個人消費が占め、民間の設備投資などを加えるとGDPの大半を内需が支えている。ゆえに、GDPに占める輸出額の割合も1ケタ台であり、日本経済は1億2,000万人の国民の内需で経済発展できる力を備えている。

その反面、輸出力を武器に日本をキャッチアップしようと経済発展に力を注いできた中国・韓国・台湾をはじめとする新興諸国は、GDPに占める個人消費の割合が5割にも満たず、内需だけでは経済発展を実現することが難しく、日本とは経済環境が大きく異なっている。

その現状は「日本は1億人超の市場をうまく活用して産業発展をとげてきた一方で、日本特有の商慣行や独自の機能にこだわりのある消費者により、海外とは異なる独特の市場がつくられてきました。このような日本市場の異質性は、生物の世界でいうガラパゴス諸島の現象に例えられます」(野村総研)というように、「ガラパゴス化した日本」として評されている。

ワンストップ対応するサプライヤーが少ない

過日もタイの大手サプライヤーのトップと話をする機会があったが、「日本は精密板金や製缶板金など、板厚で板金を区分する考え方がある一方で、プレス加工や金型製作などの機械加工を板金加工と一体で手がけるサプライヤーは少ない。そのため、日本から設備を導入したいと思っても、それぞれの専門メーカーから必要な設備を導入しなければならず、ワンストップソリューションの提案をしてくれるメーカーがいない」と指摘された。

たしかに、私たちが国内のお客さまを回っていても、この指摘にあったように、薄板板金を主体とするサプライヤーが多く、中・厚板や形鋼加工まで取り込み、幅広く板金加工に取り組むサプライヤーは増えて来たとはいえ、まだ少ない。いわんや、板金加工に加え、プレス加工や金型製作も行うサプライヤーとなると、その数はさらに限られる。

日本はサプライヤーも市場も専門分野ごとにきめ細かくセグメント分けされている。しかも、発注元ごとに系列化され、発注元を頂点とするピラミッドが構成されている。そのため、調達するバイヤーも、セグメント分けされた系列のサプライヤーから容易に必要な部材調達を行うことができる。そしてそれらの部材・コンポーネントを調達、組み立てれば製品化が容易に行える環境がある。系列ごとにサポートインダストリーが充実しているのが日本の製造業の特徴でもある。

つづきは本誌2015年8月号でご購読下さい。

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